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日本から遠い遠い、南アフリカ・ダーバンで3年過ごし、日本に再び戻った日々のあれこれ


by tcruikong
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GOETHE[ゲーテ]という雑誌を知っていますか?

GOETHEという雑誌、比較的歴史の浅い雑誌ではありますが、
なかなか読み物として面白い連載がたくさんあります。

たぶん、メインターゲットは「働いている男性」
だと思われます。が、女性が読んでも結構イケる。

今日はその中から2つを抜粋してご紹介。

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●現代の結婚 by村上龍

政府は、子ども手当てなどの支給で少子化対策を図っているが、
そもそも結婚できない層や、結婚したくない層が増えているので、
効果は限定的だと思う。50歳未満の男の約8割は年収が400万円
以下で、そんな経済状態では結婚して子どもを育てていくのは
むずかしい。飢え死にや凍死をさせずに単に成人するまで子どもを
ケアするだけだったら、年収400万円でも何とかなるかも知れない。
だが、子どもが一人で生きていけるようにするための教育には
お金がかかる。

仕事を持つ女性たちは、結婚と子育てによって、仕事そのものを
失ってしまうことが多く、独身時代より生活レベルが下がる。
産科の予約を取るのも簡単ではなく、保育所探しも非常に困難で、
子どもに手がかからなくなったと再就職を希望してもなかなか
うまくいかない。

婚活など、結婚願望が復活しているような現象が見られるのは、
配偶者を得て経済的にサバイバルしたいという思いと、家族を
作って生活の充足感を得たいとう思いがあるからだろう。
経済的にも精神的にも、ひどく生きづらい社会なので「藁にも
すがる」ように、結婚というシステムに依存しようとしている
ように見える。

そういった状況で結婚を実現しているのは、ごくわずかな
「勝ち組」の男女と、リスクとコストを考えることができない
底辺層の男女だと言われている。生活レベルを落とさずに
結婚と子育てができる富裕層と、子どもができたし他にすることも
ないからという理由で結婚する底辺層である。そういう状況は、
当然経済的格差を大きくするし、また世代間に循環させる。
富裕層は、子どもに十分な教育費をかけることができる。
底辺層で生まれ育つ子どもは、一人で生きていくスキルと知識を
身につけることが非常にむずかしくなる。

格差が固定された社会はダイナミズムを失っていく。成功を
望んでも所詮不可能だというコンセンサスが浸透して、個人と
社会とのつながりとしての仕事の意義も希薄になっていく。
そして、長い年月の末に生まれた現実なので、こういった状況を
短期間で打破するのは無理だ。結婚できない男と、結婚したく
ない女は、今後も減ることはない。マーケティングビジネスなどでは、
すでにそういった状況は確かな前提となっている。

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●ゲーテの言葉 by明川哲也

「私はなおこれから 見たいと思うものの
全体の表を 今つくっているところだ」

やはりゲーテもそうだったのだ。行動の前の表作り。
リストマニアである。

多岐にわたる仕事をこなせる者は、全体を俯瞰で見られる
能力を持っているはずだ。座標軸を感じられるからこそ、
今日一日、自分が何をなすべきかについてリストアップ
できるし、それを行動に移せる。ゲーテはナポリでこの
言葉を残した後、「時間の短いことは既定の事実である」
と付け加えている。たしかに人生は短い。日々は一瞬だ。
そんなの当然だろう、というわけだ。亡き開高健さんも
ことあるごとに「悠々として急げ」と語られていたが、
まさにその通り、とにかくリストアップして自身の人生を
デザインせよ、決してデザインされるな、迷っていないで
やりたいことをやっちまえよ、という檄である。

表作りが効果を発揮するのは仕事ばかりではない。
たとえばボクは、毎週食べる野菜十八種をリストアップ
している。週末までブロッコリーに出会わなければ、
なにがなんでもそれをつまみに飲む。こういう習慣が
ついてから、不健康を楽しめるほどに健康である。

「今日覚えるイタリア語リスト」「今週中に訪ねたい
バーのリスト」「感謝しているので何か贈り物をしたい
人リスト」・・・豊饒のための表作りが色々とできそうだ。

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by tcruikong | 2010-11-24 19:57 | 記事